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僕は古本屋のオヤジ~長野県伊那市・高遠町を本の町に・・・ - 趣味遊遊

北尾トロさん(きたお とろ)プロフィール
きたおとろ(=ペンネーム、本名は伊藤秀樹) 1958年(昭和33年)九州・福岡県生まれ。現在は東京都国分寺市に在住。職業はノンフィクション・ライター。
高校時代に上京、法政大学卒業後、就職活動をするも、気合なくフリーター稼業を点々とする。編集プロダクションでのアルバイトを経て、20代半ばからフリーライターとして活動を開始する。
1999年にオンライン古本屋「杉並北尾堂」を開業、古本屋業に踏み込む。また今年5月からは*長野県伊那市高遠町にカフェ&古本屋の「本の家」を開業。
主な著作「ぼくはオンライン古本屋のおやじさん (ちくま文庫) 」「裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫) 」ほか多数。

(長野県高遠の「本の家」)

「伊那市・高遠町(たかとおちょう)」アクセス
<車>中央道伊那I.C.から高遠方面、約20分
<電車>飯田線伊那市駅または伊那北駅より高遠方面行きバス、約20分
<高速バス>東京方面から新宿駅新南口より高遠直通高速バスあり
(1日3便~3時間45分)

本の町を作りたい~イギリス・ウェールズ、本の町「ヘイ・オン・ワイ」


どうも、北尾トロです。古本屋のおやじです。本来の肩書きは、ノンフィクション・ライターってことになるのかなあ。はっきりしているのは、これまで一度もサラリーマンというか、会社に勤めたことはないんですよ。20代のころからず~とフラフラしていて・・・。口の悪い奴は俺のこと、フーテンだったとか云うのもいます。でもね、違うって!

(裁判の)傍聴マニアなんていわれたりすることもあるのですが、それはあくまで仕事だからね。でも、違うって説明するのも面倒臭いですよね、なんだか。いろいろありましたが1999年にインターネット上で古本屋を立ち上げて古本稼業に関わったんです。どうして古本屋になろうかと思ったかについては、あとでお話します。その流れで仲間と、日本のどこかに古本屋が盛んな「本の町」を作りたいなあという話になったんです。

先に「本の町」を説明しましょうか。本の町というと、皆さん神田の神保町が一番わかりやすいでしょうか。古本屋さんが沢山集まっている町ですよね。でも俺の目指すのは少し違っています。ああいう古本のマニアが集まる町じゃなくて、本が好きな人が気楽に集まってくる普通の町をイメージしてるんです。もちろん都会である必要はありません。というよりも、古本マニアの町でないものを目指すには、郊外でしかも本屋以外にも楽しいものがある方がいいんです。何故かというと、例えばご夫婦がいたとして、ダンナは本好き、奥さんはそうでもない、というようなカップルが神保町へ行って楽しく過ごせるとおもいますか?やっぱり自然があって温泉街や美術館、お茶屋もあった方が楽しいでしょう。

そこで参考にしたのが、イギリス・ウェールズの「ヘイ・オン・ワイ」という世界でも有名な本の町です。3年前に見学しに行ってきました。「ヘイ・オン・ワイ」は、歴史はあるけれど昔は過疎化した町でした。町の名前の由来は「ワイ川のほとりの町、ヘイ」という意味です。町の人口は1500人程度で、15分もあれば1周出来ちゃうような小さな山間の田舎町です。それが今や30軒くらいの古本屋が立ち並び世界中から本好きが集まってくる町になったんですよ。これを実現したのが、リチャード・ブースという王様(の格好をした本好きの人)で、1960年代、彼が最初に町に本屋さんを立ち上げたら、その後ドンドン本屋さんが増えちゃったということで今の町ができました。本をテーマにしたテーマパークのようなものなのですが、行政や企業が箱を作ってテーマパークにするのではなく、あくまでも個人が店を作って、その店が町中で合体して町が盛り上がってきたという感じでしょうか。店といっても本屋でなくてもいいわけです。パブ、レストラン、スーパーや市場もあって、その間に古本屋もある。でも、町を歩くと本がテーマになって、なんとなく楽しくすごせるような町なのです。自分で歩いてみて、日本にもヘイ・オン・ワイのような古本の町を作りたいな、と思ったんですよ。

その後細かい経緯はありますが、とりあえず今年5月、ここ長野県の伊那市高遠町に、仲間3人と「本の家」を開店したんです。よく、どうして東京在住で高遠なの、と聞かれます。別に理由はないのですが、たまたま古本屋を開けそうな場所をネットで探していたら、この町に出会ったというだけです。高遠の町は、自然豊かで温泉もあります。とりわけ有名なのは桜や紅葉ですね。特に桜のシーズンの「高遠城址公園」のさくら祭りは、毎年30万人の観光客で賑います。シーズンには登山客や釣り客も多いですね。あとここの名物といえば蕎麦です。やっぱり美味しいですね。町も統一感があって良いところだなと心の底から思います。ということで、いよいよ「本の家」の説明をしましょう。


「本の家」は、高遠の町のど真ん中にある、新刊本も少しあるけど古本屋です。月曜は定休日ですが、それ以外は10時~19時営業中です。図書館みたいに自由に本が読める、だけど貸し出しはしない。本は売り物ということでおいてあります。でも、この店は原則的に置いてある本を自由に読みながら、お茶をすることができます。コーヒー(350円)・ビール(600円)などが飲める喫茶部門が充実しているのです。特製欧風カレーライス(サラダ付800円)もありますよ。季節ごとに様々の企画展示やイベント、例えば製本屋さんの商品の展示やヘイ・オン・ワイの写真展などもやりました。もちろん普通の古本屋と同じで、主に買取で古本を仕入れてきて店で売っています。お客さんはお茶をしながら本も読めますが、当然ほしい本は買うこともできます。ここのコンセプトとして、漫画とアダルトは扱わないことにしています。それ以外、ジャンルは国内・海外文学、写真集・絵本や詩集、雑誌や全集、ノンフィクション・哲学・自然科学など幅広い品揃えです。

それでは、「本の家」立ち上げの経緯を話しましょうか。最初の古本屋は、今の場所である高遠の町の中心部(バスターミナルの真ん前)ではなく、ここから8キロほど山の方に上がった場所に古民家を借りて始めたんです。その時の仲間は6人でした。ところが志向の違いというか・・・俺は本の町を作りたい想いがあって、歩いてまわれる空間に店を集結させたいという考えだったのですが、そうではない考えの人もいました。雰囲気のある古民家でのんびり楽しく古本屋をやりたいという人もいて、イメージが皆バラバラだったのです。そこでのんびりやりたい2人と離れて、残りの4人(現在は3人)は高遠の町の中心部へ進出、今年5月の開店へと進んだ訳です。

そんな事情で現在は3人でお店を切り盛りしています。実はこの場所、昔は本屋だったんですよ。元々のオーナーの方(隣の材木屋さんです)が前の店のお客さんで、町の中心に出てこないかと誘ってくれたのです。我々だけでこの物件を探すことは不可能だったでしょう。話題がズレますが、田舎で暮らすことに憧れて、実際に田舎暮らしを考える人が増えていますが、田舎で暮らすということは、もともと住んでいた人からの監視の中で暮らすことだということを知っておく必要があります。よそ者がいきなりウロウロしたってダメで、ある程度顔馴染みにならないとダメなんです。だいたい不動産屋にはほとんど物件情報が出ていなかったりするし・・・。本屋は何年も前に廃業していたんですが、オーナーが「家賃はタダでもOK」と言ってくれたんです。まあさすがにタダという訳にはいかないので、家賃2万円(!)を払ってますけど。ちなみに裏の倉庫スペースを含めて、店舗は45坪です。安いよねえ、タダみたいな値段でしょ。でも、誰でもが出来ると思わないでね(笑)。


▲厨房
古本屋というのはあまり儲かるものではないので、経費をかけず一人で回す(運営)のが普通ですよ、よくて夫婦二人とかね。そこで、「本の家」は会社の形態にして運営してます。俺が東京在住なので、月に1~2回、高遠に出張(?)する形になっています。他の2人は、1人は「本の家」が住処で、もう1人の女性は東京在住なのですが半分くらいは高遠で暮らしています。今近所に安い家を探しているらしい。まあこの2人に業務委託している、と思ってもらえばいいかな。もちろん俺も、商品の搬入や仕入れ・整理・値付けなどもやるのですが。

俺の役割で大切なのは「広報」というか、開店チラシも5000枚くらい作って、手分けして近隣のでかい町(伊那・松本・長野・諏訪・・・名古屋も行ったな)に撒いて宣伝をしました。同業者のお店や、喫茶店、雑貨屋、図書館、美術館など、何かこういう古本好きの匂いがする場所に置くんですね。チラシは効果的というか、チラシを見て来てくれる人は結構リピーターも多いんです。あとは「企画」だね。町を作りたいと思うなら、じっと店番してるだけじゃなくて、何か(展示とか含めて)考えて仕掛けていかないとダメなんだよ。そういう役割を担当しているのですが、結構向いているかも。

次回はもう少し深く、古本稼業と「本の家」の台所事情などのお話をしようかなと思います。


続きを読む⇒喫茶と古本屋「本の家」の裏話

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