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商店街の市民映画館~深谷のニュー・シネマ・パラダイス - 趣味遊遊

竹石研二さん(たけいし けんじ)プロフィール
1948年(昭和23年)東京都墨田区生まれ。工業高校卒業後、空調工事の会社に就職。映画の夢が捨てきれず、今村昌平監督が設立した横浜放送映画専門学院(現:日本映画学校)の一期生として映画演出を学ぶ。卒業後は日活児童映画部・企画営業部門で活動するが、児童映画部の廃止で退社。以後、妻の実家の深谷に移り住み、生活協同組合勤務を経て、2000年に「NPO法人市民シアター・エフ」を設立。2002年7月、映画館「深谷シネマ チネ・フェリーチェ」を開設。現在その深谷シネマ代表として勤務しつつ、「NPO法人埼玉映画ネットワーク理事長」なども兼務、埼玉と深谷の街づくりに奔走している。 (深谷シネマHP)

映画学校での講義~映画での街づくりと人の輪


大事なことを忘れていました。私を一層映画のとりこにした「日本映画学校」のことがありました。私は前も言いましたが、高校卒業後空調工事会社に就職しました。しかし、映画への思いが絶ちがたく今村昌平監督が作った「横浜放送映画専門学院」(現:日本映画学校)の一期生として学びました。実はその少し前に妻の影響で医療ケースワーカーの仕事を勉強していた時期もありました。しばらくは専門大学に通ったりもしましたが、やっぱりもっとストレートに自己表現したいという感情が抑えられなくなったんだと思います。

当時の映画学校は淀川長治さんが講義にいらして面白いお話をされたり、浦山桐郎(うらやまきりお)監督(キューポラのある街、青春の門)などたくさんの関係者がいらして講義されたりしたのを覚えています。浦山監督は撮影時にはシナリオを見ない監督として有名でしたが、全部頭に入っていたようですね。モーツアルトが大好きで御自分の映画「私が棄てた女」(1969年、日活)のシナリオ分析などを授業でやったのを覚えています。

この「映画館」の仕事を通じて色んな人とお会いする機会も増えました。現在では「日本映画」「ドキュメンタリーグループ」など様々なグループも出来て4年前からは「花の街ふかや映画祭」を毎年開催しています。また街中での映画撮影を協力する中で、フィルム・コミッションの活動も盛んになってきました。さらに近場の寄居町や秩父市で、出前での地域上映会のイベントも始まり、地元ボランティアスタッフの参加が広がるなど、映画を通じた街づくりと人の輪の広がりはどんどん増えています。

NPOと行政との協働には様々な影もありますが、お互いの相乗効果もあるし、何より行政は活用できる情報も沢山持っています。もちろん映画館だけを作ればいいという話ではありません。一緒に街を作っていこうとする視点と意欲が同じコミュニティ内で出来ていく、そこから人間関係やネットワークも出来ていくんだと、そんな風に思っていますね。いろんな映画を上映することで新しい団体とつながったり様々なゲストの方に来ていただいたりという経験が視野を広げ、可能性はいろんな方向に広がっていくはずだと思うのです。



例を挙げるとたまに文化庁が「懐かしの日本映画」を上映する時は補助金を出すのです。もちろん条件はありますが、こういう映画の時は入場料を500円にしたりします。あとは年に1回ある優秀映画鑑賞事業というのがあって、毎年11月ですが日本の古い映画を4本パッケージで無料で貸してくれたりするんです。こういう事業は行政と一緒になってやらないと出来ません。つまりそういう特典を活用したいのですが、市の生涯学習課とかを窓口にして協議委員会での協議を経て文化庁に上がるわけですから。つまり懐かしい映画を見る機会って中々ないから出来ればそういう映画も上映したいんですよ。もっとプログラムを充実させたいという事ですね。

実を云うとここ「深谷シネマ」は現在の場所を再来年2010年までに移転が義務付けられています。区画整理の波という訳です。けれども普通なら今のこの場所は「深谷TMO事業」として行政も参加した形で成立した市民映画館ですから、移動しろというなら変わりにこの場所で…、くらいの提案はあってもいいと思うのですが、何も聴こえてきません。この辺がむずがゆいところですが、自ら動いていくことです。もちろんすべて行政におんぶに抱っこの態度を取る気はありませんし、まがりなりにも経営的には自立してやっているわけですから。そこで私たちと地元の商工会議所で相談して、映画館が作れる土地を持っている地権者に相談することにしています。そうすれば行政もきっと応援してくれます。


私が思っているのはもちろん映画の作品の質もありますが、まずは劇場の問題です。最近は劇場に来るお客さんは減っているのでしょうが、世界を見れば(いい作品は)ちゃんとあるのです。しかし映画を見ようと思っても、普通の街に映画館がないのです。シネコンはありますがあれは大都市にだけ複数のシネコンが乱立しているだけで、シネコンのスクリーン数が増えてもそこでやっている映画は、同じ映画が大量宣伝を通して消費されているだけです。普通の都市の6割は映画館はないのです。

渋谷などは単館系の映画館が非常に多いのですが、その映画は地方には回りません。まず自分の街に映画館がある状況を作る、これが基本です。それは市民と行政がその気になれば不可能ではないのです。気楽に行ける映画館が自分の街にある。それからじゃあそこで何を上映するか、という事ですね。習慣を作ればみんなもっと映画を見るはずだと思うのです。シネコンとは違う街の映画館のシステムを作ってやる、そうしないと今ある映画たちは本当に可哀想ですよ。

現在、埼玉県内には10団体ほど映画サークルが出来ています。映画館はすぐ出来なくてもホールで映画を自主上映してもらうなどの活動をネットワークを通じて定期的に開催しています。先ほど言いました寄居町や秩父市での出前上映会をきっかけとして、最近では自主的にイベントを開催するようになりました。映画を使って、例えば団塊世代が「やっぱり映画いいなあ」と思って「常設館が欲しい」とかに育ってくれれば私はそれで満足なのです。

最後にここで宣伝させて頂きます。10月18日(土)~25日(土)の日程で「花の街ふかや映画祭 2008」を開催します。会場は埼玉県深谷市のJR深谷駅から徒歩5分の我が「深谷シネマ」と、そして今回は街中の900坪の造り酒屋である「旧七ッ梅酒造跡」を会場としてお借りします。上映作品は内田けんじ監督「アフタースクール」、橋口亮輔監督「ぐるりのこと」、他…。そして「ふかやインディーズ・フィルム・フェスティバル」として短編作品15本を上映したり、ロケーション・コーディネーター講座なども開催します。ゲスト審査員であがた森魚さんも来場します。映画祭の通行手形(期間中有効入場券)は前売り500円、当日700円です。皆さん是非おいで下さい、お待ちしています。

誰か自分の街にも映画館が欲しいと思った人はいませんか?思えば必ず叶うのです。こうやって全国の普通の街に映画館が増えていけばいいと思うこのごろです。一度是非「深谷シネマ」に見学に来て見てください。




記事中の作品をamazonで紹介
私が棄てた女(1969年) 出演:浅丘ルリ子, 河原崎長一郎ほか
アフタースクール(2008年) 出演:大泉洋, 佐々木蔵之介ほか


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