商店街の市民映画館 深谷シネマ チネ・フェリーチェ
埼玉県の深谷と云うと皆さん何をイメージされますか?まあ
深谷ネギとかが当たり前ですかね、今は
野菜全般でも出荷量は全国でも上位ですが、
花卉(かき)~特にチューリップや百合でも有名なんですよ。私の生まれは東京の墨田区なんですが、一時期、映画会社の
日活に勤めていた時期もありました。残念ながら色々ありまして退社したのですが、その時に妻の実家である埼玉県深谷に移り住みまして今日に至っています。そして、大好きな映画に携わる仕事をしているのですから、面白いと思います。
実はもともとは私もサラリーマンだったんです。でもやっぱり映画が好きだったんですね。高校を卒業してから4、5年空調工事の会社に勤めていたんですが。当時は27歳だったかな、もう結婚していて子供もいたんですけど、映画学校に入って勉強し直したいと熱烈におもいました。・・・それで
今村昌平監督の映画学校に入学して勉強を始めたんです。今考えると、少し無謀でしたがね。
「深谷シネマ チネ・フェリーチェ」というのは2002年に埼玉県深谷市にある仲町商店街の真ん中に行政とNPOが作った
ミニ映画館です。
椅子は50席。料金は大人1,000円・高校生900円・小中学生800円です。(6枚5,000円の回数券あり→3ヶ月利用可)上映は1日4回です。上映時間は毎日固定しています。何せ
映写室のフィルム交換や受付なども皆(7人)でローテーションを組んでやっていますから、慣れるまでは結構大変でした。現在はスタッフも7人いてアルバイト代とかを出せるようになりましたが、
スタート時は(私を含め)スタッフは2人だけで、しかも
2人とも二年間無給だったのです。設立してから早6年が経ちますが、一日一日の積み重ねでここまでたどり着いたと思います。
上映作品は
お客さんからのリクエストを元に、
スタッフの会議で決定しています。ですからロードショウの二番館的な作品が掛かることもありますし、懐かしの名画が上映されることもあります。大体1週間で変えていきます。ちなみにこの8月のラインナップは
「明日への遺言」「ポストマン」「靖国」「うた魂(たま)」「つぐない」・・・・・といった感じです。現在でも儲けはほとんどありませんし、ボランティアの方々もいて助けてもらっていますが、まあまあ順調です。しかし・・・実は初めに大きな失敗もしているんです(笑) 一言で説明するのは難しいですが、様々な苦難の歴史も一応ありますので・・・まずそれを少しお話しようと思います。
一つの節目は私が
50歳になった時でした。当時私は地元の生協に勤めていたんですが、少し立ち止まって振り返って人生を考えた時、映画への夢を捨てきれなかったのです。そこで生協を自主退職して
‘県北にミニシアターを!市民の会’という映画サークルで活動を開始しました。
深谷には昔は3つ映画館があったのですが、現在はなくなっています。50歳の節目・・・その時自分の夢を綴った
「50歳の夢」というメモがあるのですが、
「商店街の空き店舗を活用したミニシアターを作ろう」というのがその結論です。以後2000年に
「NPO法人市民シアター・エフ」を設立、同じ年には深谷の地元、仲町商店街の
老舗洋品店「フクノヤ」さんの空きスペースを利用した仮設の
「フクノヤ劇場」を開設、と結構順調だったのです。しかしやはり落とし穴はありました。
この
「フクノヤ劇場」は私たちの目指した商店街の空きスペースを利用した仮設の「映画館」です。3階建の建物の内、ほとんど利用していない
2階部分を貸していただいて、
畳敷きとパイプ椅子という感じの60席くらいの仮設映画館を作ったのです。地元のおばあちゃんたちのリクエストに答えて、第1回上映は懐かしの
松竹映画「愛染かつら」(昭和12年)を上映しました。1日3回まわしで1週間くらい上映したのですが何と
1150人の方々が来場してくれて、しかもそのほとんどは
70歳以上、映画が終わったらお茶とお新香で昔話に花が咲くし、本当に楽しかったですね。フィルムを松竹から借りて上映しましたが、
たまにフィルムが切れて中断しても拍手で大笑い、昔はいつもそんなもんだよという感じでしたね。そんな人たちに出会って映画の力というか、
今でもその体験は私の財産となってます。
結局この
フクノヤ劇場はその後1年ほど継続した後、閉館します。確かに開館当初は盛り上がったのですが、あまりにも無計画というか
建物が老朽化していて消防法には引っかかるし、500万円ほど借金もつくりましたし、周囲の信用も失くすし散々な目に会いました。それでも映画への情熱は無くさなかったというか、懲りない人なんですかね(笑)。ああもちろん借金はもう完済しましたよ!
その後は失敗をバネにしながら色々あって
「深谷TMO構想」というプロジェクトに関わり、遂に2002年7月
「深谷シネマ チネ・フェリーチェ」を開設しました。実はこの建物は
旧さくら銀行の支店だったのです。
銀行の金庫をそのまま映写室として使用しているのです。銀行の統廃合の動きの中で使わなくなった建物を市が借りるという形で成立したのです。言ってみれば
<深谷市-商工会議所-NPO>の3者がトライアングルの形態で成立した事業なのです。
「作品とコラボレートしたいろいろな企画をやって、映画を通じた憩いの場をつくり、街のにぎわいを取り戻したい」というのが、基本的なコンセプトです。例えば「ポストマン」という映画の上映に先立ち、地元の郵便局長会に宣伝の協力をお願いしました。すると「郵便配達の赤い自転車を展示したら」「ポスト型の消しゴムや貯金箱プレゼントしよう」といったアイデアが郵便局長からでてきます。こうした連携もいい形で広がりつつあります。おかげで、深谷市民だけでなく、隣の県からも見にくる人が増えているのです。
ここは少々面倒なお話になりますが、大切な部分なのです。だって私はお金なんか自分ではもっていませんから、こういう事業を立ち上げる場合には
行政や市民との協力体制が絶対必要だし、そうでなければ上手くいかないと感じました。次回にもうちょっと詳しくこの映画館の台所事情をお話してみたいと思います。
続きを読む⇒映画館から広がる交流の輪