小笠原からエジプトまで~皆既日食を求めて世界中をめぐる旅
皆さんは
「皆既日食」というとどんなイメージですか?黒い太陽、ダイアモンド・リング、めったに見られない天文現象・・・でも一度見たら決して忘れられない一大スペクタルイベントであり、その後の人生に大きな影響を与えるのです。少なくとも私はそうでした。
「日食病」にかかってしまい、それ以後時間の許す限り
皆既日食を追って世界中を旅するようになったのです。
私は2000年まで勤続25年の当たり前に会社の勤め人でした。
早期退職制度でその会社を退いた後、3社ほど勤務先を変えて転々としましたが、サラリーマンをやっていました。大学入学早々に
西日本をサイクリングしたり、
山岳部に所属して春夏秋冬登山に行くとか、アウトドア系の生活だったのはたしかです。百名山を達成するために会社の休暇はほとんど登山に注ぎ込みました。
1965年にスタートした百名山登山を達成したのは、
2001年のこと。最後の方は義務感だけで登りましたけど(笑)。このお話はまた後でします。
まず皆既日食のお話からいたしましょう。ご存知ない方のために少し解説すると、
日食とは太陽の一部分、もしくは全体が月によって隠れた状態のことです。明るい太陽がみるみるうちに欠けていって、
皆既日食の場合は最後に真っ黒な太陽になるのです。ただし太陽が止まっていてその上を月が移動するというのは間違ったイメージで、
新月(満月の逆~暗い月)を太陽が追っかけて行って暗い月の裏を通過する、と言った方がイメージ的には正しいです。並びとしては太陽→月→地球と一直線上に並びます。日食とは(宇宙から見れば)地球に落ちる月の影です。

▲小笠原行きの船の甲板
影の形は地球の位置により丸から楕円形と様々ですが、
地球に影を落としつつ帯(ベルト)のように移動するのです。この影は
直径100キロ位にもなり、人間から見るとかなり大きい影です。その影が地球上を数時間で移動するとイメージしてください。その影が通過する場所で待っていると、皆既日食が見られるのです。日食は欠け始めから終了までは大体2時間程度ですが、
月と太陽が完全に重なる時間、すなわち皆既日食は数秒から6分程度まで、影の大きさ(その時の太陽・月・地球の距離)によって様々です。
日食には色々な種類があります。月が太陽を隠しきれず太陽の外周部だけが細くリングに光る
金環日食、太陽が部分的に隠れる
部分日食、そして全部ぴったり隠れるのが
皆既日食です。そしてこの皆既日食のすべて隠れる直前と直後に光が一箇所だけ漏れる瞬間のことを
ダイアモンド・リングといいます。
完全な皆既日食が日本(陸地)で最後に見られたのは1963年(北海道)ですから、やはり簡単には見られないですね。

▲小笠原日食(標準レンズにて撮影)
私が最初の皆既日食を見たのは20年前の1988年3月18日、場所は
小笠原諸島へ行くツアーの船上でした。かねてから船で小笠原に行ってみたいと思っていて、親父を実家の神戸から呼び寄せて家族で
当時の豪華客船の日本丸に乗ったのです。当時は日食があることは知っていましたが、それより船旅で小笠原へ行くことのほうが主たる目的でした。でもお客さんは皆さん日食が目的で、甲板の上でカメラを撮ったり黒い観察ガラスで太陽を覗き込んだりしています。しかし
皆既日食のその瞬間、私は完全にノックアウトされたのです。
太陽が真っ黒になり、暗い空に明るいコロナが噴出する様子が肉眼で見えます。月の影は海上をすべるようにやってきて(それが見えるのです)
水平線は360度赤く彩られ、周囲は片時の夕闇に包まれます。まさに興奮する体験です。甲板にいた人すべてが興奮状態でした。さらにこの時は
太陽の周りに金星・木星・水星まで見えました。徐々に盛り上がっていたエネルギーが皆既日食と同時に一挙に爆発し、そして3分後光が強く漏れだすとまたそのエネルギーは一挙に下がります。その落差もとても面白かったです。こんな第一回目の貴重な体験以来、私の日食を追いかける歳月が始まりました。
ここで私のこれまでの皆既日食ツアー履歴(観測記録)を書いておきます。
①小笠原諸島
②ハワイ島
③インド
④ベネズエラ(南米)
⑤イラン
⑥ザンビア(南アフリカ)
⑦エジプト
1988. 3.18 3分34秒 (皆既日食観測時間)
1991. 7.11 4分00秒*
1995.10.24 0分40秒
1998. 2.26 3分00秒
1999. 8.11 2分02秒
2001. 6.21 3分29秒
2006. 3.29 3分52秒
かなり細かいですね。実は私は
記録マニアなんです(笑)。皆既日食は天気次第ですから、私の記録
6勝1敗は驚くべき成功率なのです。
ハワイ島だけが曇りだったので、日食は見えなかったんです。妻が一緒だったので気合いをいれたんですけど・・・、観測場所のゴルフ場に移動するために深夜ホテルをバスで出発しましたが、ホテルでは観測できたと後で知って、期待が強かっただけこの時はショックで夫婦とも1ヶ月は落ち込んでいました。

▲ハワイにて
日食って実は毎年2回くらい世界のどこかでは起こっています。さらにいうと皆既日食でも大体、年1回くらいはどこかで起こっています。じゃあなんで希少価値みたいなイメージなのかというと、皆既日食があっても、
天気の状況(雲や雨)で見えない事もあるし、月の影のベルト(帯)がほとんど陸地を通らないケース、北極など観測に不向きなケース等々で、やっぱりきちんと観測できる時は限られるのですね。ハワイのケースでも天気が悪ければ雲の切れ間を探してバスで移動するとか方法はあったんですけど、
ツアーなどで観測場所を限定されたり、客が撮影道具を広げたりした後では
大人数のツアーだと移動が困難という事情もあります。ハワイの失敗で
日食観測は他力本願(集団行動)ではダメだと悟りました。それ以来、インドやベネズエラなど危険でない国はツアーではなく夫婦だけで行動しています。
そうそう
日食ツアーって結構高いんですよ。今は日食病の固定客が多く、日本の代理店も数社が世界中どこでも
日食ツアーを組みますが、
相場の2倍3倍なんてざらです。イランの時なんて普段10万円強程度のツアーが35万円に跳ね上がりました。でも日食旅行でいいのは
ベネズエラ、イラン、ザンビアとか普通なら絶対行かない場所でも出かけていく訳です。(時期と場所が)そこしかないので
行かざるを得ない・・・これが大事で、それが逆にいい遺跡や自然に出会えたりしてチャンスになるんです。

▲インド、タジマハール(1995年)
さてここで日本で見られる皆既日食です。天文ファンならご存知ですが、
来年2009年7月22日に皆既日食が見られます。場所は屋久島の南端か奄美大島の北端、あるいはその真ん中のトカラ列島です。この日食は
月影がボンベイあたりをスタートし武漢、上海、トカラと移動します。ただし7月ですし、中国から日本は雨季なので雨や雲にやられる可能性が高いとにらんでいます。まあツアーは満杯でしょう。もしかするとフェリーなどの船上ツアーのほうが、最悪の場合雲の切れ間への移動が可能なのでいいかもしれません。日本で皆既日食がその次に見られるのは
2035年の9月2日なので(影は新潟から千葉までと日本を横断します)30年近く先ですが、まだ私も元気だと思いますので百名山の山頂で迎えます(笑)
続きを読む⇒皆既日食の不思議な魅力あれこれ