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糸井文彦さん ワーグナーとフルトヴェングラーに魅かれて - 趣味遊遊

糸井文彦さん(いとい ふみひこ)プロフィール
昭和20年(1945) 名古屋生まれ。幼少時代は京都、尼崎などを経て大阪大学に進学、
山岳部に籍を置く。その後、富士銀行(現みずほ銀行)に就職。24歳で東京に赴任。
IT部門・システム開発関連会社を歴任した後、2005年4月退職。日本郵政公社を経て
現在は郵便事業(株)で事業開発部に勤務し、自宅の横浜市戸塚区から霞ヶ関まで
通勤している。

指揮者:フルトヴェングラーとトスカニーニ

最近「のだめカンタービレ」というドラマの影響で少しづつクラシックファンも増えていると耳にします。私は99%クラシックしか聴きませんが、普通のポピュラー音楽とクラシックの大きな違いの一つは言うまでもなく‘指揮者’の存在です。クラシックを聴こうと思うときには作曲者(バッハとか)や演奏者(ピアノ・バイオリン)で選ぶ他に指揮者で選ぶ方法があります。


同じ曲を同じ編成で演奏しても指揮者が違えばすぐ分かります。
一例を挙げますと私はフルトヴェングラーというドイツの指揮者の演奏に15歳で始めて出会ってからずっと好きなのですが、日本で出たフルトヴェングラーは海賊盤を除けば、多分全部持ってます。この人の指揮による演奏は1回1回の演奏が全て違うのです。また演奏の最中にテンポが伸び縮みする(遅くなったり、早くなったりする)のです。ある意味、ドラマチックであり、ロマンチック、劇的とでもいいましょうか。例えばイタリアのトスカニーニという指揮者と比較すると分かりやすいのですが、トスカニーニはインテンポ~つまりいつ演奏してもテンポが変わらない(比較的早い)のです。トスカニーニも大変偉大な指揮者ですが、やはりカリスマ的・熱狂的人気があるのはフルトヴェングラーのほうですね。限りなく再現芸術(再生)の地平からは遠いとでもいいますか、その即興性~同じ曲を演奏しても全く違う~曲想に合わせて変化させる~がある意味では、原曲を歪めてるという批判もありつつ、そこには人を惹きつけて止まない魅力があります。

カラヤンとかカール・ベームとか有名な指揮者は多いですが、あまりにも多く(CDもLPも)出すぎているので私はあまり触手が伸びません。皆さんも是非フルトヴェングラーの‘英雄’(ベートーヴェン)を機会があったら一度聴いてみて下さい。実は「フルトヴェングラー協会」という昭和44年設立の団体がありまして、私は設立当初からそこの会員なのです(笑)まあファンクラブみたいなものです。会報を発行したり、情報交換したり、公演記録などの資料や一般には出回らない音源を会員に提供したりしています。
またちょっとマニアックな話で、恐縮なんですが・・・


▲ウラニアのエロイカCD
1944年12月19日にフルトヴェングラーがウィーンのムジークフェラインで指揮した「英雄」は現在でも最高の演奏と言われていますが、戦後アメリカのウラニア社というレコード会社がフルトヴェングラーの許可を得ずに発売(海賊版)したため、訴訟問題となり発売差し止めになりました。この演奏は「ウラニアのエロイカ(英雄)」と呼ばれて幻の一品扱いとなり、ファンの様々な議論を生んだのです。1953年に出たウラニア原盤はピッチが高く早い(第一楽章;14分53秒)のですが、現在ではピッチが修正された15分35秒バージョンも未修正バージョンも、あちこちのレコード会社からLPもCDも出ています。ちなみに最初期の米ウラニア版LP原盤は中古市場で最低20万円などと言われますが、CDなら2000円位で買えます。是非機会がありましたら聴いてみて下さい。ますますマニアックですみません。

別に無理に針で聴くことはないのですが、どうしてもLPを聴きたいという方はそれなりの機材は必要です。そうでなければちゃんとした音は出ません。先ほどメンテナンスやセッティングの事も話しましたが、LPを聴きたいと思ったら、通常のスピーカーやアンプがあるなら、フォノイコライザー(アンプとプレーヤーを繋ぐ機器)や針のプレーヤーを追加すればちゃんとした音になりますよ。予算的には20万もあればOKだと思いますが。


▲プレーヤー、トーレンス
ここでちょっと珍しい、でも私が大好きなある作曲家と歌手のお話をしようと思います。

デュパルクというフランスの作曲家がいます(1848~1933)。一般的には全然有名ではありませんが、その理由は一つには歌曲がほとんどである事と残された作品が非常に少ないのです。本当は沢山あった作品を本人がほとんど棄ててしまったのです。何故かはわかりません。出来ばえに不満だったのでしょうか?長生きしてはいますが、30代後半以降は神経症の影響か作曲活動をしていません。残された作品のほとんどを占める歌曲は全17作だけです。このデュパルクの歌曲の中から12作を選び、フランスのバリトンであるカミユ・モラーヌという歌手が歌っています。私は特にボードレールの詩を歌う「旅へのいざない」がお気に入りです。中古盤屋でこのLP「12の歌曲」を見つけたときは嬉しくて、これも少し高かったのですが買いました。CDも出たのですが今はもう廃盤になっているかもしれません。


▲カミユ・モラーヌ「12の歌曲」
あと更にシュッツとショスタコーヴィチについて付け加えさせて下さい。
シュッツはバッハの丁度百年前、三十年戦争の頃のドイツの作曲家です。「ドイツ音楽の父」といわれています。作品は宗教曲、合唱曲が主なんですが静謐で心に沁み入ってくるような音楽です。音楽評論家の菅野浩和さんは「ドイツの魂の歌」と形容しておられます。

もう一人のショスタコーヴィチはご存じのとおり旧ソ連の音楽家で、私はここ10年くらいすっかりはまってしまっています。大変深刻な音楽ばかりで、気楽に楽しみに聴ける類の音楽では全くありません。相当気合を入れて立ち向かう必要があるのですが、弦楽四重奏曲(全15曲)を中心とした室内楽などには聴く度に心を揺さぶられ打ちのめされてしまいます。

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